ナイル川をアスワンから南へ280kmほどさかのぼり、河岸の断崖にきざまれた古代エジプトの岩窟神殿遺跡。
紀元前1250年ごろに古代エジプトのファラオであるラメセス2世によって作られた7神殿のうちの2つ。もともと遺跡のあったヌビア地方がアスワン・ハイ・ダムの建設によって水没することになったため、ユネスコの援助で1964〜68年、両神殿をナイル川より64m高い場所に解体・移築した。
その内部は55m以上の奥行きがあり、大列柱室と小列柱室が中央奥の至聖所へと続く。
大神殿の大列柱室には、死をつかさどる神オシリスの姿をしたラメセス2世の彫像が8体たっており、壁面にはヒエログリフ(聖刻文字)やレリーフ(浮彫)が一面にきざまれている。エジプトのラメセス2世軍とヒッタイト軍によるカデシュの戦いを描いたレリーフは一見の価値あり。
至聖所にはラメセス2世のミイラと、ラー・ホルアクティ、プタハ、アメン・ラーの3神を祭っている。
聖壇は東向きで春分と秋分の日に、日の出の光がこれらの像を照らすよう設計されている。
北へ200mはなれたアブシンベル小神殿には、王妃ネフェルタリと女神ハトホルが祭られ、正面には高さ10mほどの王と、ハトホルをかたどった王妃の立像6体が彫られている。
13世紀頃まで教会として機能していたため、破壊から逃れることが出来、神殿としての保存状態は良い。
数ある古代エジプトの神殿群の中でも特に美しいことで知られる神殿である。
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